ここにきて、僕は管理職との全面対決を決めた。

 それは、生徒の部活問題に触れたからだ。

 

 新たに赴任した高校には、「生徒は全員部活動に入部すること」というルールがあった。

 そんな狂ったルールに出会ったのは、生まれて初めてだった。

 あり得ない。

 放課後は自由な時間だろう?赤点とって補習を余儀なくされるならともかく、恒常的に18時まで拘束されるなんて、ただの人権侵害じゃないか。

 自由権の侵害だ。憲法違反だ。

 みんな、そうは思わないのか。

 

 とりあえず、全教員にアンケートを行う事を提案した。

 

 アンケートの結果。

 7割以上の教員が「部活の強制を続けるべき」と言った。

 主な理由は以下の通りだった。

 ①部活を強制しないと生徒が楽な方に流れ、学校が荒れる

 ②学校の評判を上げるためには部活しかない

 ③強制的に入部させないと潰れてしまう部が出てくる

 ④全員から「部活動費」を取っているのだから、全員入部にしないとそれを徴収する理由がなくなる

 

 部活動は一体何のためにあるのか。やりたいからやるものじゃないのか。生徒指導のために強いる苦行なのか?(「やりたくないこともやらなくてはいけない、それを教えるのも学校の役目だ」という意見もあった)

 はたまた、部活動は学校の評判を上げて生徒数を確保するための道具なのか。

 ③の理由は何だ。そんな部は潰れてしまったらよいではないか。潰れて困るのは、その部を持ちたい部活大好き教員だけだ。

 ④に至っては何だ。本校では、全保護者から「部活動費」として、一ヶ月に800円、一年間におよそ1万円を徴収している。その費用を取るための根拠がなくなるから?

 

 何もかもがおかしい。

 しかし道理が通らない。

 

 続いて、校長室にて、僕は校長に言った。

 「このようなことが文科省の見解として出ています」

 

 入部の選択について

 Q「生徒に対して、入部する、入部しないの選択を自主的にさせる権利を保障すべきである」

 A「部活動は、学校教育の一環ではありますが、生徒の自主的、自発的な参加により行われるものです」注

 

 僕「仮に保護者から訴えられたら、確実に負けますよ」

 校長は言った。「そんなことは分かっている」

 愕然とした。

 

 僕「訴えられたら確実に負けるような不正義を、僕たちは続けているのですか」。

 校長「多くの先生方が強制入部を望んでいる限り、当面はこれを続けるしかない」。

 僕は言った。

 「では、僕は一人になっても、おかしいことはおかしいと言い続けます。なぜならば、僕は教師だからです」

 

 この日まで、僕自身、何でこの問題にこだわるのか分からなかった。結局、今まで上手くいっていた管理職との関係は決定的に悪くなった。管理職だけでなく、7割以上の教員を敵に回すことになった。

 それでも、僕には戦い続ける理由がある。

 それは、「僕が教師だから」だ。

 それは、「生徒のために」だ。

 本当は入部したくないと悲しんでいる、生徒のためにだ。

 

 大人は、自分の人権と生活は、自分で守るべきだと思っている。大人には、いくらでも戦う方法がある。

 しかし、生徒はどうだ。生徒には戦う術がない。

 狂った教員が定めた狂ったルールで、生徒の人権が不当に侵されている。この「教員による人権侵害」について、誰が生徒を守るというのか。

 心ある教師が、戦うしかないではないか。

 

 僕は言った。「なぜ、やりたい生徒だけがやる、それじゃダメなんですか」

 校長は、何も答えなかった。

 

 現在も、戦いは続いている。

 最近は、職員会議でも公然と批判する。

 少しずつではあるが、仲間は増えてきている。

 

 あなたの学校はどうですか。

 生徒の強制入部というルールはありませんか。

 あなたは教師として、それを看過できますか。

 

 

注:スポーツ庁・文化庁「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案に関するパブリックコメントの結果について」2017年3月14日付,7頁