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教員は長時間労働によって命を奪われても救われない

匿名

 

※前編にあたる第1回はこちらから ⇒ なぜ、教育行政は、「教員版残業代ゼロ法」を変えたくないのか?

 

 

  今回は、給特法(残業代ゼロ法)によって、長時間労働に苦しむ教員は裁判に訴えても救われないことをテーマにしたコラムを書く予定でした。ところが、数日前、長時間労働が原因で心の病に倒れた知人のA先生の公務災害認定が却下されたという話を聞きました。一瞬、「えっ!、子どもたちのためにすごく仕事をしていたのに。ひどすぎる。この事実を伝えなければ」と思いました。

 

 教員の過労死認定はほとんど認められません!給特法(教員版残業代ゼロ法)があるため、授業準備、部活動指導、生活指導、成績処理、教育委員会などへの報告書の作成はすべてボランティアです。そのため、これらの仕事を勤務時間外に行っても公務と認められません。電通やNHKよりもひどい実態です。

 

 知人のA先生は、平成25年1月、長時間の公務が原因でうつ病になったとして、公務災害認定を求めました。教育熱心なA先生は、「荒れた学級」であった6年の学級担任を引き受けました。

 

 うつ病になる前の時間外労働は、3か月前が111時間(持ち帰り仕事53時間)、2か月前が145時間(持ち帰り仕事64時間)、1か月前が84時間(持ち帰り仕事51時間)でした。条例では45分の休憩時間が定めてありますが、A先生は、実質的には10分程度しか休憩はとれていませんでした。それで、休憩中に働いていた35分を時間外労働に含むと申請しました。なぜなら、休憩中も子どもたちの生活指導にあたっていたからです。校長先生も、「A先生は、始業時間の1時間前には出勤し、登校指導も行っていました。」と証言しているように教員として子どもたちのために一生懸命仕事をしていました。その努力もあって、学級は少しずつ落ち着いた雰囲気を取り戻していたといいます。

 

 主な持ち帰り仕事は、学級通信の作成、教材準備でした。荒れた学級を任されることとなったA先生は、子どもたちや保護者との信頼関係を築こうと学級通信を毎日発行していました。また、うつ病になる3か月前には修学旅行があり、学級通信には、修学旅行の日程や引率教員など保護者に伝えるべき「お知らせ」も書かれていました。  

 

 毎月の学校行事等、本来は、学校長名の文書で出すべき内容についても学級通信で保護者に伝えられていました。つまり、学級通信は、学校と保護者の信頼関係を高める貴重な役割を果たしていました。

 

 

 

 平成28年9月、地方公務員の公務災害認定を行う地方公務員災害補償基金は、公務外と認定しました。その理由として、学校における発症3か月の時間外労働は30時間、2か月前は22時間、1か月前は10時間であり、時間外労働は認定要件 より少ないことをあげています。時間外労働があったにもかかわらず関わらず、なぜそれが極めて過小評価されたのでしょうか。同基金は勤務時間終了後に行っていた成績処理、授業準備などについては、二つの理由から公務と認めていません。

 

1. 勤務時間を記録した公的書類がない。

2. 勤務時間終了後の成績処理・授業準備などは自主的・自発的な活動であり公務ではない。

 

自宅での仕事は、校長から命じられたものではなく、自宅での仕事をせざる得ないほどの事情はないことから、「時間外労働は0時間」と判断しました。休憩を10分しかとれないほど忙しい学校のことをまったく知らず、このような判断をする地方公務員再補償基金という組織は、ひどすぎる!!

 

 基金が、このように判断した一つの理由は、校長先生から「本人に自宅作業を命じていない。教員の職務と勤務態様の特殊性から残業や持ち帰り仕事も多い。しかし、それは自主的・自発的な残務作業である。」という証言があったことらしい。給特法に沿えば、校長先生の証言は間違っていません。校長先生に問題があるのではなく、制度上の欠陥がこのような悲劇的な結論につながったのです。 

 

 

 

図は、給特法制定時と平成18年度の教員の勤務実態を比較したものです。

 

 給特法の制定時には、授業準備は勤務時間内にほぼ終えていました。しかし、現在は、勤務時間内では、授業準備や成績処理の業務を終えることはできず、勤務時間終了後に行っています。学校でこれらの業務を行い、かつ客観的な勤務時間記録があった場合は、公務災害認定において、公務と認められる可能性があります。しかし、これらの仕事を自宅で行った場合は、公務と認められる可能性はほとんどありません。子育て中、介護などがある教員は、持ち帰り仕事をせざるを得ませんが、すべて自発的・自主的な活動、つまり、本人が、自ら好んで、好きでやっている活動、と判断されてしまいます。「わが子を寝かせつけて、夜中仕事をしている教員も、自ら好んでやっている」と判断されるのが給特法の世界です。

 

 A先生は命までは奪われませんでした。しかし、A先生の努力は、公務とは認められませんでした。教員が無償の労働によって命を奪われても公務災害とならない全ての元凶は、給特法です。

 

 


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